#132 無駄を楽しむ

12月18日に大阪で開催された、井上逸兵先生と堀田隆一先生のトークライブに参加しました。そもそもライブハウスのような場に言語学者が呼ばれていること自体が印象的で、ことばをツールとしてよりは、愉しむものとして捉える感覚が反映されているというお話が始まったように記憶しています。ことばは情報伝達の手段にとどまらず、楽しむ対象でもあるという点について、ヤコブソンの話題にも触れられていました(到着時点ですでにお酒が入っていたため、細部の記憶はやや曖昧です…)。そのほかにも、効率が強く求められるAI時代だからこそ浮かび上がる「雑談」や「無駄」への関心、そしてメディアによる発信が、もはや一方向的な「発信」というよりも、「共有」に近いものになっているのではないか、といった話題まで、幅広く展開されていました。 ...

2025-12-20

#131 ポライトネスについて(3)

B&L(Brown & Levinson)のポライトネス理論では、具体的なポライトネス・ストラテジーとして、5つの主要な方略が挙げられています。ここでは、宇佐美(2002)をもとに、その内容を簡単に整理しておきたいと思います。 ...

2025-12-19

#130 ポライトネスについて(2)

前回の記事に引き続き、宇佐美(2002)からまとめます。 取り上げたいのは、Brown & Levinson(以下 B&L)のポライトネス理論に対してよく向けられる、「文化差を考慮していないのではないか」という批判に対し、異を唱える形で提示されている「フェイス侵害度見積もりの公式」です。 ...

2025-12-18

#129 ポライトネスについて(1)

ポライトネスについて、あれこれ読み漁っています。そんな中で、『月刊言語』に掲載されている宇佐美(2002)の冒頭の説明がとても分かりやすかったので、ここにまとめておきたいと思います。 ...

2025-12-17

#128 気配りの公理

Leech(1983)の Tact Maxim(気配りの公理) について、まだ理解の途中ではありますが、学びの経過としてここにまとめておきます。 Leech は、Grice の Cooperative Principle が、命題的意味、すなわち what is said や what is implicated(i.e., sense)の解釈には有効である一方で、なぜその言い方が選ばれるのか、すなわち politeness や indirectness、rhetorical choice(i.e., force)を十分に説明しきれないと考えています*。その点について、Leech は次のように述べています。 ...

2025-12-16

#127 ずらして和らげる

前回の記事では、テレビCMの宣伝において、直接的な提案を避けつつ、間接的に提案を行う方法として、テレビCMには少なくとも4つのタイプがあることを紹介しました。今回はそのうち、実際のCMで確認された3つのタイプについて、具体例を挙げながら整理してみます。 ...

2025-12-15

#126 CM宣伝の国別比較

昨日取り上げたテレビCMの分析について、ここでポイントだけ簡単に整理しておきます。分析の結果、アメリカのCMは、アジアの広告と比べて、提案(suggestion)の出現頻度が高く、命令文(imperative)が使われる割合も高いことが明らかになりました。全体として、より明示的に視聴者を説得しようとする傾向があると言えそうです。 ...

2025-12-14

#125 テレビCMのことば

Shmidt et al. (1995) の Suggestions to buy: television commercials from the U.S., Japan, China, and Korea という論文を読んでいます。この論文は、テレビCMにおいて視聴者の購買を促す「提案(suggestion)」というスピーチアクトが、アメリカ・中国・韓国・日本でどのように実現されているかを比較したものです。 ...

2025-12-13

#124 ポップアップグロス

井上(2017)では、日本映画の英語字幕翻訳について、次のように指摘されています。「聴衆は英米圏の人たちが想定されているため、瞬時につじつまが合い、自然な会話として受け取られるような訳でなければならない。この即時性が大きな制約であり、小説の翻訳のように説明的に長く訳したり、訳注をつけたりすることはできない」。そのため、こうした制約が「苦し紛れの訳や誤訳に見えるような字幕が生まれる理由でもある」と述べています。 ...

2025-12-12

#123 視線にみる理解

豊倉・山田(2017)では、これまで長く使われてきた「1秒4文字」という字幕のルールについて、その妥当性を実際に検証しています。具体的には、字数制限の異なる3種類の字幕(1秒4文字、6文字、8文字)を用意し、視聴者の視聴行動にどのような影響があるのかを、視線計測装置を使って測定しています。視線の動きは、字幕の情報を処理する際にどれだけ認知資源が必要かを把握するための重要な手がかりになるからだそうです。 ...

2025-12-11