#190 意味の公共性

三木(2019)を読みながら、「話し手の意味の公共性」という概念について考えています。 これは、私自身、日ごろからかなり意識している問題でもあります。言語学の理論としてというよりも、日常のさまざまなコミュニケーションにおいて、いちばん重要なことの一つではないかと思っているテーマです。簡単に言えば、誰かが何かを発言し、それを誰かが聞いているとき、話し手はその意味に対して責任を持たなければならない、ということです。言わないという選択をするのか、それとも言って、その結果を引き受けるのか。私はいつも、その二択だと思っています。 ...

2026-2-16

#189 中国語話者の褒め

前回の出来事をきっかけに、中国語における「ほめ」行動について少し調べてみました。楊(2012)では、中国語話者が目上の人に対してどのように「ほめ」を用いるのかについて、大学生を対象としたアンケート調査が行われています。日本語話者としての一般的な感覚からすると、初対面の相手や目上の人は、どちらかといえば誉めにくい対象のようにも思えます。しかし、楊の調査では、相手が目上であっても、ほめ行動の使用率は85%と非常に高いことが示されています。 ...

2026-2-15

#188 真面目な話の中で

先日、中国からの留学生の保護者にご連絡する機会がありました。私は中国語がまったくできないため、中国語の先生に通訳をお願いしての国際電話でした。 ...

2026-2-14

#187 翻訳からみる文化の違い

引っ越しの準備をしています。リフォーム以外での本格的な引っ越しは初めてなので、バタバタし、肩と腰がやられまくっています。 引っ越しと言語学……と考えていた中で、井上(2017)のトトロの例を思い出しました。そこでは、映画の字幕・吹き替え翻訳を対象に、当該言語の文化のコミュニケーションの原理に根差していることが多い慣習表現に注目しています。 ...

2026-2-13

#186 リフレーミングの実践

リフレーミングの実践が、実際にどのように臨床場面で用いられるのかについて、家族療法家の事例が紹介されています。 一つ目は、6歳の女の子がいまだにおねしょをしてしまうというケースです。寝る前に水を控えるとおもらしの量が減るという報告を受け、セラピストは、おねしょの原因は娘本人に責任があるのではなく、本人とは切り離された「身体」にあるのだと説明します。たとえば、「今日から少し身体を調べましょう。寝る前にお水を飲まないことにしよう。そして朝起きてどうなるか調べよう…」と語りかけることで、問題の所在を「本人」から「身体」へと移し替えます。こうした枠組みの転換によって、状況が解消したという場面です。 ...

2026-2-12

#185 実践的コミュニケーション

リフレーミングについて、岡本(2013)を読みました。 冒頭ではまず、他者への行動変容を促すような、直接的・間接的な働きかけとしての実践的コミュニケーション・ストラテジーは、従来の言語学や会話分析、インタラクション研究においては、やや忌避される傾向があったことが指摘されています。ありのままのコミュニケーションの実態を分析することこそが純粋な研究である、という立場からすれば、意図的に相手の行動や認知に働きかける「技法」を扱うことには慎重にならざるを得なかった、というわけです。 ...

2026-2-11

#184 字義以上なことば

井上(2015)における「前提」と「含意」の説明も、ここに書き留めておきたいと思います。私は旅行広告をきっかけに「前提」という考え方に焦点をあてましたが、井上(2015)では、人間のコミュニケーションの仕組みを理解する上で重要な概念として、この点が取り上げられています。井上はまず、次のように述べています。 ...

2026-2-10

#183 前提の特性

前回取り上げた「前提」には、もう一つ重要な特性があります。それは、文が否定されても、前提そのものは残り続けるという性質です。 たとえば、「私の兄は34歳です」という文を考えてみます。この文を「私の兄は34歳ではありません」と否定しても、「私に兄がいる」という前提自体は変わりません。年齢については否定されても、兄の存在はそのまま保たれます。 ...

2026-2-9

#182 憧れの〇〇10日間

新聞の旅行広告を眺めていたら、なかなか面白い売り文句が多いなと思いました。目に留まったのはクラブツーリズムの広告で、「感動のスイス10日間」「はじめての爽やかエジプト10日間」「ギリシャの宝石箱 紺碧のエーゲ海クルーズとアテネ8日間」といったフレーズが並んでいます。細かいところを見ると、交通についても「都心からのアクセスが良く嬉しい羽田着」や「憧れの氷河特急に乗車」など、感情に訴えかける表現が目立ちます。 ...

2026-2-8

#181 オリンピックの演出

本日は、朝の身支度をしながら、ミラノ・コルティナ五輪の開会式を見ていました。そこで印象に残ったのが、女優のサブリナ・インパッチャトーレの登場シーンです。 ...

2026-2-7