井出(1997)の『世界の女性語・日本の女性語』において、特に興味深く読んだのがフェミニズム台頭以前からあった日本語の女性語研究です。

国語学における「女房詞」や「遊里語」がそれに該当するとのことでしたが、どちらもあまり馴染みがなかったため、色々と調べてみました。

まず「女房詞」についてですが、室町時代初期(1336年〜)ごろから宮中に仕えていた女房たちが使っていた言葉で、主に食べ物や身体に関することに用いられていたそうです。たとえば、「おでん」「おかず」「おかか」「おから」「おこわ」「おはじき」や、身体に関する「おなか」「おつむ」など、「お」がつく言葉が多く見られます。また、語尾に「もの」や「もじ」がつく「青もの」「しゃもじ」などもその一例です。今回はそうした馴染みのある言葉ばかりを挙げてしまいましたが、現在でも日常的に使われ、定着している語が実に多くあります。「おいしい」も「いしい」という言葉の接頭語に「お」がついたものだと知り、とても驚きました。

一方の「遊里語」は、江戸時代(1603年〜)に遊里で遊女が用いた特殊な言葉遣いのことです。助動詞の「んす」「さんす」や、動詞の「くださんす」「ござんす」といった「んす」で終わる敬語や、人称代名詞の「わちき」「おまはん」などに特徴があります。

そういえば以前、大河ドラマの『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』を観ていたとき(※)、吉原の貧しい生い立ちから江戸のメディア王へ駆け上る出版人の生涯を描いた作品の中で、花魁役の小芝風花さんの演技とセリフに魅了されたことを思い出しました。「どうぞ、ほんにわっちの心の臓を奪っていきなんし」といった印象的なセリフがありましたが、あの独特な言葉遣いも遊里語のひとつだったのだと納得しました。


参考
井出祥子 (編). (1997). 『女性語の世界』 明治書院. https://kotobank.jp/word/%E9%81%8A%E9%87%8C%E8%AA%9E-651286 https://kotobanomado.jp/column/6735/

Keywords
女房詞、遊里語