多々良他(2022)を参考に概念メタファーについてまとめます。 概念メタファーとは、「ある概念を別の概念に関連付けて理解するという、人間の認知的な営み」のことです。ここでいう概念とは、私たちが心の中に蓄えているさまざまな物事についての知識であり、概念メタファーは「AはBのようなものだ」という形式で慣習化した理解のパターンを指します。

例えば、時間の概念を金銭の概念に対応させて考えることで、「時間を浪費する」や「時間を節約する」といったように、本来は金銭に関わる動詞を時間に対しても使うことができます。

この「AはBのようなものだ」という表現において、理解の対象となる概念「A」を「目標領域」、理解のために用いられる概念「B」を「起点領域」と呼びます。一般的に目標領域には抽象的で捉えにくい物事が、起点領域にはより具体的で理解しやすい物事や経験が当てはまります。そして、起点領域内の要素を目標領域内の要素へと対応付けることを「写像(mapping)」と言います。

「愛は旅である(LOVE IS A JOURNEY)」というメタファーを例に考えてると、起点領域である「旅」には「起点―経路―到達点」という経路のイメージ・スキーマ(認知的な枠組み)が含まれています。これが目標領域である「恋愛」の「出会い―つき合い―結婚」といったプロセスに写像されるため、「二人は人生の岐路に立っている」や「別々の道を行かなければならない」といった表現が生まれます。

こうした概念メタファーが成り立つ背景には、大きく分けて2つの基盤があると言われています。一つは、時間と金銭、旅と恋愛のように日常の経験をもとに共通点を見出す「経験的類似性」です。もう一つは、異なる二つの経験が日常的に同時に起こることから形成される「経験的共起性」です。例えば「気分が上向く(I’m feeling up)」のように、楽しい気持ちと身体の動き(上を向く・上がる)が頻繁に連動することから生まれるメタファーなどがこれに該当します。


参考
多々良直弘・松井真人・八木橋宏勇 (2022). 『実例で学ぶ英語学入門:異文化コミュニケーションのための日英対照研究』 朝倉書店.

Keywords
概念メタファー