エスニックジョークを通して、世界各国の民族がどのようにステレオタイプ化されているかを見るのはとても興味深いものです。

東森(2012)では安部(2010)による定義が紹介されており、特定の民族集団における行動や思考の特徴を「愚かさ」や「賢さ」といったイメージ(スクリプト)と結びつけ、ジョークに取り込んでいると説明されています。また、こうしたテーマやイメージは、語る側と語られる側の間にある歴史、政治、言語、宗教、社会といった文化的な関係から生まれるものです。そのため、エスニックジョークは社会で起きていることを映し出す「社会の温度計」のような役割を果たしているとも言えます。なお、誰かの愚かさを笑うようなジョークにおいては、笑う側と笑われる側の間に「中央対周辺」という構図が存在することも指摘されています。

実際にどのようなジョークがあるのか、具体例を見るとさらに面白さが分かります。例えば早坂(2006)では、「スープにハエが入っていたらどう反応するか」という有名なお話が挙げられています。

イギリス人:スプーンを置き、皮肉を言って店を出ていく

アメリカ人:ボーイやコック、支配人を呼びつけ、挙句の果てには裁判沙汰にする

アイルランド人:ハエに向かって「吐き出せ、吐き出せよ、ちくしょう!」と叫ぶ

日本人:周りを見回し、自分だけにハエが入っているのを確認してからそっとボーイを呼びつける

また、津田(2001)には、豪華客船が沈没しそうな緊急事態を描いた有名な例があります。船長が男性客たちに救命具を着けて海へ飛び込んでもらうため、国ごとに言葉をかけ分けるというものです。

イギリス人には:「あなたは紳士ですね」→「もちろんですとも」と飛び込む

ドイツ人には:「これは船長の命令だ!」と一言

イタリア人には:「飛び込むのは規則違反ですよ」→「規則なんてどうでもいい」と反発して飛び込む

オランダ人には:「そこにあるのが最後の救命具だよ」→争ってそれを奪い、海へ飛び込む

アメリカ人には:「ご安心ください、あなたには十分な生命保険がかけられています」と伝える

カナダ人には:「アメリカ人は飛び込まないと言っています」→対抗意識から飛び込む

日本人には:「他のみなさんは、もう飛び込んでいらっしゃいますよ」

これらはあくまでステレオタイプに基づいたジョークではありますが、「確かにそうかもしれない」と思わず納得してしまう部分もあります。 文化や民族性の違いを知るきっかけとして、たまにはエスニックジョークを覗いてみるのも面白いのではないかと思います。


参考
東森 勲(2012)「エスニック・ジョークと文化:関連性理論による分析」『国際社会文化研究所紀要』第14号(157–194頁) 早坂 隆(2006)『世界の日本人ジョーク集』中央公論新社 津田 葵(2001)『コミュニケーションの日米比較』大阪大学出版会

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エスニックジョーク