両親が現在イギリスを旅行中とのことで、自分が行ったイギリス旅のことが急に懐かしくなり、当時の写真を見返していました。留学中の友人を訪ねた旅で、ロンドンからカンタベリー、ライ、サザンプトンへと転々と滞在しました。

その旅の途中でライ城を訪れた際に撮影したのがこちらの写真です。この地域は南部沿岸に近いため、かつては密輸業者(密輸ギャング)が多く、ライ城は捕らえられた密輸業者や犯罪者を収容する牢屋として使われていたそうです。実際に中へ入ってみると、当時の残酷さが伝わってくるような狭く暗い場所でした。

興味深かったのは、彼らがどのようにして身元や悪事を隠そうとしていたかという点です(以下の画像から)。

展示1 展示2

ひとつは、幽霊や悪霊の作り話を利用したことです。密輸品や隠し場所を守るために「あの場所には恐ろしい幽霊が出る」といった不気味な噂を流し、時には自分たち自身が幽霊に扮することもあったそうで、実際に目撃談まで残っているのだとか。

もうひとつは、本名を隠すためにあだ名を使っていたことです。ただ、そのあだ名を改めて見てみると「これで本当に良かったの?」と思わず笑ってしまうような、絶妙にダサいものやストレートすぎるものがたくさんありました。

写真のパネルで確認できるだけでも、以下のようなあだ名が並んでいます。

Stuck-in-the-Mud:泥にはまった奴(わからず屋)
Shoemaker Tom:靴屋のトム
Curse-mother Jack:母親を罵るジャック
Poison:毒
Towzer:タウザー(引っ張り回すもの)
Toll:通行料
Yorkshire George:ヨークシャーのジョージ
Pouncer:飛びかかる者
Butcher Tom:肉屋のトム
Footsey:足っ子
Rough Tickner:荒っぽいティックナー
Flushing Jack:フラッシングのジャック / 顔を赤らめるジャック
Old Joll:陽気なじいさん
The Miller:粉ひき屋
Nasty Face:えげつない顔

怪談話というナラティブ(物語)や独特の名付けといった「ことば」が、沿岸地方という特異な現場で生存戦略として巧みに使われていたことを考えると、ことばが持つ強さや面白さをあらためて感じさせられます。


Keywords
名付け, ナラティブ