名嶋(2017)による批判的談話分析、および研究の定義についてまとめます。

まず、その名称から「談話を批判的に分析するための単なる方法論」だと勘違いされることが多いため、最近では「批判的談話研究」という言葉がより一般的に使われるようになっています。これは、特定の分析手法を指すのではなく、ある種の研究姿勢を共有する学問分野という認識が正しいようです。

名嶋は、批判的談話研究を次のように定義しています。「批判的談話研究は、分析者の問題意識をもとに、一定の社会問題や現象に目をやり、それらをめぐる談話に内包された権力性を分析を通して見える形にし、社会に訴えるものなのです。つまり、人々が抑圧や差別などから解放されるのに役立つような知識を伝えるようとするものです。一言でいえば、一般的な研究が真理や法則を追求するのが目的であるのに対し、批判的談話研究は、現実社会の不条理を改善すべく, 人々が、社会を読み解く地力、『批判的リテラシー』を身につけることを目指していると言っていいでしょう。

こうした研究において重要となるのが、言説の背後にあるイデオロギーに気づくことです。イデオロギーとは、名嶋の言葉を借りれば「世界の見方」と言い換えられます。一つの社会であっても、異なる世界の見方をとれば、そこには全く別の世界が出現することになります。これは、ある特定のイデオロギーを他者に受け入れさせることができれば、意図的に世界を変えたり、別の世界を作り出したりして他者を支配することも可能になるということを意味しており、私たちはその点に注意を払わなければなりません。そうした危険性に対して、批判的談話研究の知見が有効になってくる、ということになります。


参考

嶋義直編(2017)『メディアのことばを読み解く 7つのこころみ』ひつじ書房.

Keywords
批判的談話分析(研究)