#263 落語の笑い

野村(1996)は、落語の特徴を以下のように分類しています。 まず、落語の会話は、演者の聴衆に対する直接の「カタリカケ」と登場人物どうしの会話の二重構造をもっています。これを自然会話と比較すると、登場人物の会話における発話には「同一人物の1回の発話がながい」「発話のかさなり(オーバーラップ)がない」「場面転換や時間の経過をしめす独白がおおい」といった特徴が見られます。また、発話におけるポーズ(間)には、「聴衆の反応をたしかめる」「場面転換を示す」「非言語行動をしめす」「登場人物のためらいをしめす」「演出上の強調を意図するもの」が多く含まれています。 ...

2026-4-30

#262 ほめられたら…

柏木(2017)は、日米のインタビュー番組を対象に、言語・非言語の両面から「ほめの返答」の比較分析を行っています。日米では「ほめる」習慣やその頻度が大きく異なると感じることが多いなかで、返答のバリエーションに着目したこの研究は、コミュニケーションの実態を知るうえで非常に興味深いものです。 ...

2026-4-29

#261 文字のコード・スイッチング

東(2009)では、言語の切り替えだけでなく「文字のコード・スイッチング」についても詳しく取り上げられています。 これは、当時の携帯電話におけるメールのやり取りが日常的なものとなった背景の中で触れられている話題です。著者は絵文字について、「どうも、この絵文字メールは、特に若者の間で(若者に限らないが)、相手への親近感、感情、自分のウチの気持ちなどを率直に表現するために使うもののようである」と述べています。 ...

2026-4-28

#260 明快性に関わるメタ

授業をしている際、ふと自分自身の話し方を振り返ると、「ここは面白いポイントなのですが」や「ここは大事なところなのですが」といった前置きをよく使っていることに気づきます。 ...

2026-4-27

#259 すぐに本題に入るのもあいさつ?

あいさつ言葉についての話題が続いてしまいますが、「ゆる言語学ラジオ」のYouTubeで非常に興味深い内容を見つけました。 番組内では『ものの言いかた西東』という本をベースに、「東北(特に青森)は挨拶が少ない」という傾向について言及されています。もちろん「おかえり」「ただいま」「いってらっしゃい」といった基本的な言葉は使われるのですが、他地域に比べると全体的に挨拶の頻度が低いとされているようです。 ...

2026-4-26

#258 周辺にはじまりを見る

真田(1981)によれば、柳田国男は『毎日の言葉』において、挨拶言葉が本来の意味を失い、形骸化していく過程を詳しく考察しています。以前取り上げた「おはよう」や「こんにちは」「こんばんは」といった言葉も、今では言葉自体が持つ具体的な意味は消失していると言えます。しかし真田は、こうした定型化こそが、むしろ「挨拶言葉らしい」挨拶の誕生であると述べています。 ...

2026-4-25

#257 動物も人間も

今回は、あいさつの本質について考えるなかで、鈴木孝夫先生の『「あいさつ」とは何か』を拝読しました。 本の中では、イギリスの人類学者マリノフスキーが提唱した「phatic communion(話すことによる一体化)」という概念が紹介されています。マリノフスキーが未開社会の生活を詳しく調査したところ、人々にとって「出会った相手が口をきかない」という状況がいかに不安や恐怖を抱かせるものであるかが明らかになりました。つまり、言葉を交わす「あいさつ」という行為そのものが、情報を伝えるという目的以上に、人と人とを心理的に安定した共通の場に引き入れる重要な役割を持っているというのです。 ...

2026-4-24

#256 いつでもオハヨー

学生たちが日常的にどのような挨拶を交わしているのか興味を持ち、簡単なアンケートをとってみました。厳密な集計は行っていませんが、回答を眺めてみると、その日初めて会う相手には時間帯を問わず「おはよう」と言ったり、親しい仲では「やっほー」「おつかれー」といった言葉が多く使われたりしている印象を受けます。 ...

2026-4-23

#255 言語生活研究

東(2009)を読み返す中で、アメリカの社会言語学が世界の潮流の中心であるという現状を踏まえつつ、翻って「日本にそのような学問は存在したのか」という問いが立てられています。 ...

2026-4-22

#254 読者ではなく消費者

三省堂で購入した稲田豊史さんの著書『本を読めなくなった人たち』を読了しました。 その中で、自分が日頃迷っていた「聞き手・読み手の位置づけ」について、非常に納得させられる整理があったのでご紹介します。これは、著者が2022年に刊行して話題となった『映画を早送りで観る人たち』ですでに言及されている分類なのだそうですが、映像作品に向き合う人を以下の2種類に分けて定義しています。 ...

2026-4-21